シンガポールでの講演を終えて


写真左から筆者、Yeo教授、久保田有一先生
 去る9月3日から9月5日にかけて、シンガポールを訪れ、NUH(シンガポール国立大学病院)、NNI(国立神経科学研究所)の脳神経外科医、研修医に向けて講演する機会をいただきました。今回の講演テーマは、「日本における特発性正常圧水頭症に対する診療方針」と、「最新の可変圧式シャントバルブの使用経験」です。日本の「正常圧水頭症治療ガイドライン」の紹介にとどまらず、日本から世界に発信した価値の高い臨床研究、「SINPHONI」「SINPHONI2」によって明らかとなった最新の知見をお伝えしました。
 更に、厚地脳神経外科で施行している「局所麻酔下腰椎腹腔シャント術」や合併症防止のための「腹直筋膜Gap法」についても紹介しました。

 シンガポールでは特発性正常圧水頭症に対する診療は、日本と比べ大変少なく、成人水頭症手術の数も多くはありません。経済発展の著しいシンガポールでも高齢化が進んでいて、この疾患に対する診療は、今後ますます必要になると思われ、皆さんに、大きな関心をもって、私の話を聞いていただきました。当院の「正常圧水頭症センター」顧問である岩崎琢也先生に指導していただいた講演スライドも大変好評でした。今回の日程中に3回の講演機会がありましたが、お伝えしたかったことは十分理解していただけたようでした。

 私がシンガポールを訪問したのは、今回が初めてでした。東京23区程度の面積の小さな国土ですが、赤道直下に位置し、大きな台風や地震に見舞われることがほとんどありません。船舶が行き交う海の関所のようなマレー海峡を望む位置であるため、貿易や金融などの産業で、都市は成長し続けています。東京の摩天楼と異なり、建築家の自由な発想で建てられた、面白い形の高層ビルが建ち並び、見ていて楽しい景観です。
 我々が訪問したシンガポール国立大学も、広大なキャンパスに多くの施設があり、中でもNUHは、日本では見たこともない大きな規模の病院です。病院には地下鉄の駅が直結しており、ショッピングモールが広がり、一つの街を形成していました。病院内の各施設はとてもきれいで機能的でした。
お忙しいにもかかわらず、NUHのYeo教授に脳神経外科の施設を案内していただきました。病棟、外来、手術室、研究施設・教育施設、ホテルロビーのような自由診療の外来や病棟。見学途中で、休憩(院内のスターバックスでコーヒータイム)を挟まないといけないくらいの規模でした。翌日に講演したNNIも神経疾患の専門病院にもかかわらず、とても大きな施設でした。また、勤務している先生方も、皆さん国外最先端施設で研究経験があり、Seow教授やNicole Keong先生も、正常圧水頭症の手術症例数は多くはないものの、豊富な知識で驚きました。講演終了後には記念品もいただきました。今回は講演に行ったのですが、逆に学んだことや感心したことが多かったと思います。
講演の合間にセッティングされていたランチやディナーも、NUHやNNIだけではなく、外勤の脳外科医や意欲ある研修医も集まり、とても素敵な雰囲気の中でいただきました。とても良い機会をいただき、今回の講演に私を推薦してくれた厚地正道先生にも感謝しています。

 観光にあてる時間はほとんどありませんでしたが、フライトまでの数時間で「マリーナ・ベイ・サンズ」の屋上に行き、シンガポールの摩天楼の展望を楽しみました。夢のような、あっという間の講演ツアーでした。今回、私と一緒に講演された、東京女子医科大学てんかんセンター長・朝霞台中央総合病院脳神経外科部長の久保田有一先生には、私の不慣れな英語を補っていただくことが多々ありました。また、久保田先生の講演「日本におけるてんかん外科」「VPシャントのお話」はとても惹きつけられる内容で、最先端のてんかん外科をわかりやすく講義していただき、私も勉強になりました。私の知っている“てんかんの外科医”の中で、最も明快で楽しく話をしてくれる先生でした。ありがとうございました。

 今回の経験を今後の診療に役立てていきたいと思っておりますので、今後もよろしくお願い致します。

  鹿児島大学医学部臨床教授
厚地脳神経外科病院 正常圧水頭症センター長 川原 隆
 
 
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